黒木

【5 名古屋五千万円恐喝事件】加害者の親が「自首」 傑作(0)
2010/2/12(金) 午後 0:28連載 警察はなぜ堕落したのかノンフィクション、エッセイ Yahoo!ブックマークに登録 5 名古屋五千万円恐喝事件
 事件への対応を遅らせた真相は何か

 加害者の親が「自首」

 p93-95


 しかし、このあたりからこの事件は奇妙な展開を見せはじめる。

 前ロの被害少年の母親とK氏らの訪問に驚いたA少年の両親は、三月六日午後三時ごろ緑警察署の生活安全課少年係に事情説明と相談に出向いた。

 それによると、五日夜、被害少年と母親、そして五人の男の計七人がA少年の家に来て、「おたくの息子に二千二百万円脅し取られたうえ、暴行も受けて二十日間入院した」。さらに十人ほどの少年の名前を書いて、「こいつらも加害者だ。おたくの息子は二千二百万円を弁償してくれ。カネさえ出せば事件にはしないから」というようなことを申し出た。


五人の男のうち主に二人がかなり強い口調で詰め寄ったらしい。A少年の両親は金額の多さに驚くとともに、得体の知れない男五人が来てきつく言ったことに怖くなり、不安を感じた。

息子に事実を確認しようにも、夕方に遊びに出て行ったきり帰ってこない。
そしてその晩、被害少年の親たちが帰ったあと、たまたまA少年から家に電話があり、母親が「大変なことになっているが間違いないのか」と問いつめると、やったというようなことを認めたという。

それで両親も事態を理解したが、金額など具体的な状況はいぜんとしてわからないまま、とにかく警察に話したほうがいいということになったという。

 このとき両親は、「相手は二千二百万円払えば事件にしないというが、得体の知れない男たちもついていて、むしろ事件にしてもらったほうがすっきりするのでしてください」という意向を示した。

そして、弁護士についてはお金の問題があるが、こういう場合は弁護士を立てたほうがいいのかと相談した。それに対して署員は、「事件は事件であるが、民事的なことは専門家のほうがいい。弁護士を紹介することはできないが、相談してみてください」と弁護士会の名簿を見せた。

 そのうえで、A少年の両親には、「事件の内容は今の段階ではまったくわからない。いずれ被害者を呼んで事実確認をする。そのときに犯罪性があれば事件として捜査します」と説明したという。

 結局、緑警察署は息子に代わって同署に「自首」してきた両親を追い返してしまったのだ。

 しかし、緑警察署はまったく動かなかったわけではない。
その日のうちに少年係の署員から生活安全課長にA少年の両親の話についての報告が上がり、翌七日朝、課長から署長に報告が上がった。

署長は、「(金額の)桁がちがうんじゃないか。とにかく大きな事件だ。態勢を整えて捜査をしなくてはならないな」と指示を出した。

 そこで、被害者を早く呼んで事案の概要をつかんで本部へ報告しようとしたが、少年係の担当者は四人しかいない。

六日、七日の夜は、中学校の卒業式で荒れる卒業生を取り締まるため管内の十一の中学校を深夜警戒しなくてはならなかったうえ、身柄の送致や覚醒剤事件のガサ入れの応援など、時間に追われていた。

週がかわる十三日ごろには片づくということで、その後にこの案件を事件シフトして態勢を整えることにし、十四日か十五日にA少年と母親を呼ぶつもりでいたのだ。

 緑警察署に出向いた日の夜、A少年の母親は被害少年の母親に電話し、つぎのように言った。

 「お金は弁償させてもらいます。しかし、息子にはちゃんと杜会的責任をとらせて罪の償いをさせたいので、警察に被害届を出してください」

 しかし、翌七日の夜、
 「Kさんたちにすべてを任せているので、このままやっていきたい」
 と被害少年の母親から電話連絡があった。

 奇妙な展開と言ったのは、このあたりなのだ。

加害者側が積極的に警察署を訪れて息子の処罰を求め、警察署の担当者はこれを追い返した。そして本来、積極的に訴えるべき立場の被害少年の母親は、警察への被害届の提出を拒み、「Kさんたちにすべてを任せているので、このままやっていきたい」というのである。
by zederauge | 2010-11-06 17:18